おめでとうございます
おめでとうございます
若いころは、お正月がどうしておめでたいのか分かりませんでしたが、今では、生きているだけでお目出たく、かつ充分ありがたいと思えるようになりました。
年末年始に繰り返されるお決まりの行事も、苦にならないばかりか、再利用された古材のような味わいさえ感じ始めています。
ということで、初日の出を家内と一緒に散歩コースでもある淀川の土手までお迎えに出かけてみました。
妻と来て 初日を待てる 淀の川
高校時代の恩師、日下艸人先生の年賀状へのお返しに作ってみたのですが、どうものん気過ぎたようです。納得がいかないので、箱根駅伝を見ながらしつこく何句か作ってみました。
襟高き 人影踏み行く 初日かな
初日眺める人の影ゴルフコース切る
行く年と 昨夜は語れり 霜の朝
初神籤 山茶花濡れ落つ石の上
頑張って作ってはみたものの、先生の賀状に添えられた一句
《よき夢を見ばや ずんぶり初出で湯》
には到底太刀打ちできぬ出来に少々気抜けしましたが、所詮、やっつけ仕事ではかなうはずがありませんね。
そんな自分を弁護するために理屈をこねるわけではありませんが、谷崎潤一郎が《文章読本》の中で、若き作家の卵に教示した次の一文を、年頭に掲げておきたいと思います。
創作に携わる者は、つとめて心掛けるべきものと信じるからです。世間を気にするな、受けねらいで時流に迎合してはいけない、ということだと思います。
谷崎は言い放ちます。
『娑婆を絶て』
この言葉を私は座右の銘としているのです。が、いかんせん凡人は知らず知らずのうちに世間に振り回されている自分に気付いて自己嫌悪に陥るのが常です。
とはいいつつも、今年こそはと気合を入れて、新年のごあいさつ代わりに戯れ歌を一句ひねってみるのでした。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
創作は 各自勝手で 御座候
アートギャラリー まなりや
大阪府枚方市。京阪本線 牧野駅から徒歩3分のアートギャラリー。