ラケット京阪電車に乗る

ラケット京阪電車に乗る

ロンドンにいる娘から、バトミントンのラケットを届けてほしいとのリクエストがありました。数日後にドバイ万博で合流する予定の旦那に預けてほしいとのこと。旦那さんは孤軍奮闘して京都に引っ越したばかりでしたので、新居を訪ねがてら手渡しで、と夫婦そろって出かけることになりました。

私は娘の試合を一度だけ見たことがあります。中1の新人戦でした。くじ運よく決勝まで勝ち上がったのですが、一点も取れずに負けました。体格もよく、小学生のころからバトミントンの経験がある相手に対して、娘はクラブ活動を始めて日も浅く、あまりにも華奢でした。『センスとしては全然差はなかったよ』と私は慰めたのですが、卒業するころには、この時の優勝者ともいい勝負ができていたようですから、私の言ったこともまんざらでたらめではなかったようです。当時、枚方の競技団体が主催する大会で救護活動をしていた私は、バトミントンに限らず、卓球、バレーボールなど多くの試合を現場で見ていましたので、目だけは肥えていたのだと思います。

長らく放置されたままだったラケットを眺めながら、びくともしない大きな壁に、自分は今まで何回、全力でぶつかっていっただろうか、と考えたりしました。

いま私の目の前にある大きな壁は、50号のキャンバスです。持てる力をすべて注ぎ込んで、とことん出し切ったと思える作品にしなければなるまい。と、肩のあたりに力が入る私をあざ笑うかのように、ラケットは優先座席でのんびりくつろいでいるのでした。



アートギャラリー まなりや
大阪府枚方市。京阪本線 牧野駅から徒歩3分のアートギャラリー。

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