《思い出》の置き場所
《思い出》の置き場所
大ぶりなキャンバスの片づけ場所にと、以前から目をつけていた押入れを空っぽにしました。
押入れとはよく言ったもので、布団やまくらだけではなく思いがけないものが押し込まれています。神棚にあるべき白木のお社から、固まった小さな段ボール箱に入った習字道具一式まで多様です。手紙や祝い袋の中に多量のお守りが真新しい輝きを放ちながら両手に一杯ほど出てきたときには、これほど(お守り)しなくてはならないものが果たしてあったのかなと、ちょっと考え込んでしまいました。
これまで複数の家族が生活してきた家ですから、思い出の品も重層的です。押入れの一番上の一番奥まったところからは、盾の下から仏具の花輪が小さな座布団に乗ったままお数珠と一緒に出てきました。こういう分野の品物は処分が難しく、目につかない場所に堆積していくのも仕方のないことです。
額に入った重量感のある家紋と、仏具とお社、柔道の試合でもらった盾を畳の上に並べて、しばしの感慨にふけった後、盾だけを粗大ごみとして処分することにしました。これが災いを最小限に抑える最善の策だと判断したのでした。
三つの盾とテナントをベランダに並べて最後の記念写真です。今は朝の散歩が日課で、柔道着で取っ組み合いをするような馬力はありません。思い出の品と、在りし日の弾けるような勢いとを45ℓのビニール袋に詰めて処分しました。
取り外した押入れの襖もひょっとして画材になるかと残してはいますが、いままで区切られていた空間が一つになったので、実にさっぱりとしました。
一昨日から急に冷えこんできました。敷居の上に立ってぼんやり眺めているうちに、バランスを崩して後ろ向きにこけそうになったのと、大きなくしゃみをひとつしたのがほぼ同時でした。こういう思い出は場所もとらず処分にも困らないのでいいですね。
アートギャラリー まなりや
大阪府枚方市。京阪本線 牧野駅から徒歩3分のアートギャラリー。